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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)363号 判決

補助参加人 安全信用組合

理由

一、(証拠調べ)の結果を総合すれば、本件第一の建物は、終戦直後の頃建築されたバラツク建共同住宅であつたが原告主張の頃訴外石井保一郎が補助参加人から金一〇〇万円を借受けるに際し、亡被告関谷宗茂は右建物を担保に提供して抵当権を設定することを承諾し、昭和三三年三月五日亡被告関谷宗茂の所有権保存登記を経由し、翌月一四日抵当権設定登記を了した。その後原告主張のような経緯で第一の建物が競売に付され、原告がその主張の頃これを競落し、代金を納入して昭和三五年一〇月二二日所有権移転登記を済ませたものである事実が認められる。してみれば第一の建物につき原告は所有権を取得したものといわなければならない。成立に争いのない甲第四号証、乙第一号証、証人林光彦の証言及び被告関谷宗治本人尋問の結果中、以上の認定に牴触する部分はにわかに信用できない。

二、次に、原告は被告関谷宗治、同関谷茂及び同三和特殊製鉄株式会社が第一の建物を占有していると主張するところ同被告等は右主張を否認してその占有にかかる建物は第二の建物であると主張するのでこの点に検討を加える。しかして、両建物とも登記簿上は志村町四丁目五番の土地(枝番号の点は暫く措く)上に存在することになつているけれども後記のごとく、第二の建物は現存していない事実が認められるところ、同事実を前掲各証拠を総合すれば、同被告等の占有する建物は第一の建物であることが認められる。

以上の事実によれば、原告は、第一の建物につきそれが原告の所有であることを争つている被告等との間において所有権を有することの確認を求め、また、被告関谷宗治、同関谷茂及び同三和特殊製鉄株式会社に対して右建物の明渡を求める権利を有するものというべきである。

三、進んで参加人の請求について判断する。参加人の主張は、第二の建物が存在することを前提としているのでこの点について検討する。前掲甲第一、二号証、第五号証第六号証の一ないし三、乙第二ないし第四号証、証人丸本昭典、角崎正一、小川良純(一部)及び石井保一郎の各証言並びに原告及び被告関谷宗治(一部)各本人尋問の結果を総合し、これに弁論の全趣旨を斟酌すれば第二の建物は昭和一四年以前の建築にかかるもので、始め倉庫であり、昭和一五年七月九日被告三和特殊製鉄株式会社が売買によりその所有権を取得したものである事実が認められる。尤も、前掲乙第六号証の一によれば第二の建物は昭和二三年八月分割されたものとして建坪二七坪の木造瓦葺平家建倉庫となつた旨登記され、さらに本訴提起後の昭和三六年五月二七日一部取毀により建坪二一坪になり、かつ、増築並びに区分構造の変更により建坪三三坪の居宅になつた旨の変更登記がなされている事実が肯認され、また、当事者参加人も第二の建物の建坪は三三坪であると主張している。しかるに、原告が競落した建物は、前示のように終戦後の建築にかかるバラツク建共同住宅であり、また、前掲甲第二号証乙第八号証、証人角崎正一及び石井保一郎の各証言を総合すれば昭和三四年九月一七日当時現況が木造亜鉛メツキ鋼板及びルーフイング葺平家建共同住宅で、建坪四〇坪四合七勺である事実が認められるので、第一の建物と第二の建物とが同一物であるとは到底考えられない。しかも、右各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば現在第二の建物が存在していない事実が認められる。以上の認定に牴触する甲第四号証、乙第一号証の各一部、証人林光彦の証言及び被告関谷宗治本人尋問の結果は前掲証拠に対比して信用することができない。

以上の事実によれば当事者参加人の主張に排斥を免れない。

四、以上の次第で、原告の請求は理由があるからこれを認容すべく、当事者参加人の請求は理由がないからこれを棄却する。

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